さて、ベンゼンの反応もこれでラスト。
最後はどうやって前回紹介した
Friedel-Craftsアルキル化
の問題点を解決するか説明していくよ。
名前から想像がつくと思うけど
Friedel-Craftsアルキル化 を発見した人と同じ人が考えたものだ。
ちなみにアルキル化とアシル化を合わせて
Friedel-Crafts反応
と呼ばれたりもします。
Friedel-Craftsアシル化
という名前の通り
以下のようにベンゼンにアシル(Acyl)基をつける反応になります。
さてこのサイトでずっと勉強してくれている
賢明な皆さんならこれを見ると「アルキル化されてなくない?」と思うかもしれない。
….まぁ落ち着いてほい、これはいわば前半…
いわばマッスルスパークの『天』の部分に過ぎない…
まず「地」の部分を語る前の下準備として
反応機構の説明をしておこう。
…そういえばこのサイトでは初出だったの
アシル基について超簡単に紹介しておこう。
いってみれば以下のようなにケトンの片方が何でもよくなったもののことです。
で、こいつのカチオン状態をアシリウムイオンといいます。
まぁ②③はお馴染みなので説明(略)とします。
※分からなければ「ベンゼンの反応 ① ② ③」をご参照下さい。
まぁ反応機構はこんな感じです。
補足としては
ルイス酸であるAlCl3は触媒量だったけど、この反応ではたくさん(1当量以上)必要になる。
理由としては以下のように触媒であるルイス酸が生成物と錯体を形成するためだ。
こうなると、触媒の役割を果たせないため、反応は起こりにくくなってしまう。
つまり100の出発物質(ベンゼン)に1の触媒(ルイス酸)を加えると1の錯体を形成し
残りの99の出発物質(ベンゼン)が反応しにくくなってしまう。
このため1当量(100のベンゼンから100の錯体を作るのに必要な量)以上のルイス酸が必要というわけだね。
今までベンゼンの反応は触媒量だったのでちょっと考え方が変わりますのでご注意を。
そしてこのあと大量のH2Oを使ってAlCl3を取り除けば反応は終了になります。
さて、アシル基は電子求引基なので
ベンゼンの反応性は低下するから
アシル基が複数ベンゼンに結合することはない。
後は転移なんだけど、転移っていうのはより安定になれるのなら起こる現象だ。
アシリウムイオン内で転移が起ころうものなら以下のように
安定化するはずの共鳴で逆に不安定になってしまう。
なので転移も起こりえない。
よってFriedel-Craftsアルキル化の2つの問題点は発生しないんだ。
さてここまでの説明を踏まえて
アシル基をアルキル基にする反応…
いわばマッスルスパークの『地』の部分を解説していこうとしよう。
※初見だと?かもしれないが今までやってきたことを思い出せばいけるのです。
まずは二重結合部分にHを結合させてOHを作る。
※NaBH4はよく二重結合の還元反応に使われているので
C=OやC=CをとりあえずCH-OH、CH-CHにしたい
時に便利です。
②ハロゲン化水素によるハロゲンの付加
見たまんま、OHをハロゲンに置換します。
※細かいところは 応用編:アルコールの反応② の「強酸との反応」をご参照
H-という求核剤のおかげでSN2反応が起こる。
これで当初の目的であるアルキルの付加は完了できるってわけだ。
一応内容としてはこれで完了だけど最後にもう1点
キン肉星・キン肉大神殿に安置される「フィニッシュ・ホールドの壁画」
に様々な解釈が存在するようにやり方が必ず一つしかない、なんてことはない。
※間違えば某盗人よろしく丸焼けになるリスクもあるけどね…
例えばアシル基からアルキル基へ変える反応なんてのは
以下のようにWolff-Kishner還元を使えば1回で終わらせることができる。
まぁここら辺については後日別の単元にて詳しく説明しようと思います。
皆さんも色々な可能性を考えてみてくだされ。
ではまた次回。
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