それでは続きを説明していくよ。
さて、まずは下のものを合成するにはどうすればいいだろうか?
答え書いてあるじゃん?
と思うかもしれないけど思い出してほしい。
アルキル基は電子供与基なのでオルト、パラ配向を考えることができる。
ようはまた3パターンの生成が考えられる。
で、実際のところは以下のような比率で生成される。
なんとオルト配向のものがメタ配向と同じくらいしか生成していない。
なぜなのかというと、原因は C(CH3)3 にある。
こいつが“かさ高い”ので求核攻撃しにくくなってしまっているんだ。
※ピンとこなかったら SN2反応速度に影響を及ぼす因子① の最後の方を読んでみよう。
よってオルトが出来にくくなってしまったので
パラ配向の方がたくさん出来てしまうんだ。
そしてこういった時にはこんな疑問が出てくるんじゃないかな?
こんな状況でもオルト配向をたくさん作りたい場合はどうすれば?
ってね。
前口上が長くなったけど、これに役立つのがタイトルにもあるスルホン化というものだ。
スルホン化自体についての解説は 応用編:ベンゼンの反応② をご参照。
ポイントとしてはスルホン化が可逆反応というところだ。
ようするに一度付けた後に外すことが簡単に出来る。
この性質を利用することで
1.あらかじめ何もつけたくないところにはーSO3Hを付ける。
2.目的のものを付けた後ーSO3Hを外す。
という操作をすることが出来るんだ。
上の補足になるけど、スルホニル基はかさ高い。
オルト、パラ配向であろうと今回のようにかさ高いものに限らずパラ位につく。
こうすれば次の反応で目的のものをオルト位につけることが可能ってわけだね。
まとめると以下のようにして目的のものがゲットできる、というわけです。
さてでは今度は以下の場合はどうやって合成出来るかを考えてみよう。
ぱっと見簡単だと思うかもしれないけど
NH2やOHは一番活性化する力が高い、という事を思い出してほしい。
何が言いたいかというとこいつらを使うとオルト、パラにだけ置換基を付ける反応で止めるのは難しく
以下のようにオルト、パラ位両方に置換基がついてしまうんだ。
加えてNH2やOHは電気陰性度も高い。
だからこいつら自身が勝手にどこかに攻撃することもありえちゃう。
これを防ぐために以下のように保護基を用いて
NH2やOHの活性化機能を低下させる方法というものがあるんだ。
※保護基を付ける反応はまた別単元で行います。
pyridineは溶媒です。
HIの前にあるconc.はconcentrated:濃縮されたという意味。
なので”濃い”HIっていう意味です。
ちなみに上図をみたら分かると思うけど、加水分解を行えばNH2に戻すことができる。
※塩基性条件だけでなく酸性条件(H+ , H2O , Δ)で加水分解を行えばOK。
これはOHを元に戻すときにも使えます。
今回扱ったものを組み合わせることにより、色んなことができるようになるよ。
しっかりと理解をして進もう。
ではまた次回。
© 2021 猫でもわかる有機化学