それでは続きを説明していくよ。
ポイントは以下の4つ
(1)電子供与基⇔電子求引基の相互変換
(2)Friedel-Crafts反応の注意点
(3)スルホン化によるブロック
(4)保護基の利用
では順番にいてみようー。
前回「置換基が結合する順番」について解説したよね。
じゃあそれを踏まえて以下のような合成は出来るだろうか?
….不可能?と思った人は前回までの話はしっかり頭に入っているんだと思う。
単純に考えれば
NH2はオルト、パラ配向
だからにいきなりメタ位にいかないよね。
実はこれを解決する方法があるんだけど、何だか分かるかな?
そう、置換基を電子供与基から電子求引基に変えればいいんだ。
ゲームでいうところのクラスチェンジみたいなイメージだね。
※ゲームしない人宛てに言い換えるなら転職して職業や職能が変わると捉えてもらってもOK。
色々あるけどここでは代表的な2つを説明しておくね。
[a]NO2(ニトロ基) ⇔ NH2(アミノ基)の相互変換
電子求引基の NO2と電子供与基の NH2は例えば以下のように
還元、酸化反応で相互変換が可能なんだ。
これを使えばNitrobenzeneのオルト、パラ位にいきなり置換基を結合させたり
先ほどのaminobenzeneのメタ位にBrを結合させることができるようになる。
ちなみに今回は還元反応でFe、HClを使っているけど、
他にも
・Zn(Hg)、HCl(Clemmensen還元っていう…別の単元で解説しますね。)
・H2、Ni
なんかでも還元できます。
[b]アシル基 ⇔ アルキル基の相互変換
まぁ基本は[a]と同じだね。
電子求引基のアシル基と電子供与基のアルキル基は以下のように
還元、酸化反応で相互変換が可能っていう話です。
上図のようなパラジウム触媒を用いた水素化以外に還元反応では
これまたClemmensen還元でもできます。
あと酸化は 応用編:アルコールの反応① でも出てきたCrO3 を使っております。
応用編:ベンゼンの特徴① でも出てきたbenzyl位は
以下のようにHが奪われた後も共鳴構造が複数できる。
だから正電荷を 分散できる=安定 ということで、酸化されやすいんだ。
こいつを使えば以下のようにアルキル基が結合しているのにも関わらず
メタ位に置換基を導入できるってことです。
さて 応用編:ベンゼンの反応③ で出てきた Friedel-Crafts反応 なんだけど
実はこれ、どんなときにも使える、という訳ではない。
例えば以下のように強く不活化されたベンゼンには使えないんだ。
理由としては
・電子求引基がベンゼンを不活性化している
・アシリウムイオンの求電子性が他の芳香族求電子置換反応を起こす求電子剤と比べてそこまで強くない
からだ。
だから例えば以下のようなものを合成した場合
1.Friedel-Craftsアシル化反応
2.ニトロ化
の順番で反応させないといけなくなるんだ。
反応機構は
ここら辺は結構ひっかけ問題として扱われるたりするので注意しよう。
さてキリもよいので本日はここまで~。
ではまた次回。
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