アルデヒドとケトンの反応④

それでは続きから~

4.アルコールの付加

(3)ヘミアセタールの単離

前回の(1)アルコールの付加とは、で触れてたけど
中間体であるヘミアセタールは普通に考えるなら単離は不可能だ。

ではどうすればいいか?というと
以下の二つの方法がある。

①反応性の高いカルボニルを使う
②ヘミアセタールの時にひずみの少ない五員環や六員環に環化するもの

どちらも方法としては
可逆反応をヘミアセタール側に傾ける
といったものだ。(まぁそれしかないよね…)
では順番に見てみよう。

①反応性の高いカルボニルを使う

内容としては アルデヒドとケトンの反応② で紹介した水和反応と同じ感じなので詳細はそちらを..
ということで以下のように
formaldehyde

2,2,2-trichloroacetaldehyde
のような反応性の高いカルボニル化合物を使うと反応の平衡が右に傾くので
ヘミアセタールが多くできるようになり、単離できる。

②ヘミアセタールの時にひずみの少ない五員環や六員環に環化するもの

タイトルだけ見ると???だね。
どういうことかというと
そもそもカルボニルの方に平衡が傾いてる大きな理由
ヘミアセタールが不安定
だからだ。
ここまで言えばなんとなく察しがつくと思うけど
ヘミアセタールを安定
にすることが出来れば平衡はヘミアセタールの方に傾くので
結果単離が可能になるっていうことです。

具体的にどんなものがあるかというと、ズバリ「糖」だ。
※詳細は生化学の分野に突っ込んでいっちゃうので略

ここでは一例としてグルコースを紹介しておこう。
以下のようにヘミアセタール(分子内ヘミアセタールと言われている)になると
ひずみの少ない五員環や六員環に環化し、カルボニルの状態より安定になるのです。

(4)アセタールの加水分解

最後は
カルボニルからアセタールになる反応の逆反応
すなわちアセタールの加水分解について見てみよう。

一応反応機構が以下のような感じです。

では細かいお話を

そもそもカルボニルからアセタールになる反応は可逆反応だよね。
↑を式で表すと下のようになる。

まぁ見ての通りで
アルコールが多ければ平衡はに傾く
つまりはアセタールが多くできるようになる。

そしてが多ければ平衡はに傾く
つまりはカルボニルが多くできるようになる。

さてしれっと書いてあるHから分かるように
こいつは酸性条件じゃないと起こせないのでご注意を。
なんでかというとアセタールが保護基として使われるからだ。

カルボニル基は反応しやすいっていう話をしたと思うけど
こいつを使えばカルボニル基を他の反応から守ることができる

過去に説明したものでいうと
塩基性反応剤、有機金属反応剤、ヒドリド反応剤
なんかも同様だね。
そして可逆反応なので酸性水溶液中で元に戻すことが可能なんで色々便利です。

ちなみに保護基としては以下のジヒドロキシエタンを用いた環状アセタールが良く使われます。

理由はとしては2つあって
・エントロピー的に有利
・生成物が比較的安定
ってことがあります。

参考として反応機構もご紹介。

最後にちょっとした例を紹介しよう。

パっとみた感じだとCHCHLiでS2反応使えば簡単!
と思うかもしれないけど、そうするとカルボニルの方が反応しやすいので
以下のように別のものがたくさんできてしまう。

こんな時にアセタールを使うことで以下のように目的のものに限定して反応を起こすことが出来ます。

色々なことに使えるのでよく理解しておこう。

ではまた次回。

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