アルデヒドとケトンの反応②

それでは続きから~

3.水和反応

応用編からポツポツ登場した「水和反応」を今回は詳しくやっていきます。

ポイントは大きく2つ
では順番に進めていくよ。

(1)反応機構

まず、カルボニルに水を付加すると下のようにOHが2つ結合したものになる。
これはカルボニル水和物(ジェミナルジオール[geminal diol])と呼ばれている。

意味としては
ジェミナル[geminal]:1つの炭素原子に同じ置換基が2つ結合
ジオール[diol]:OHが2つ

この反応には酸触媒、塩基触媒と2通りの反応があって、↑が酸触媒
↓が塩基触媒
※HがOHに変わっただけ

パっと見は同じに見えるけど、反応機構は異なってくる。
比べてみると以下のような感じ。

<酸触媒>

<塩基触媒>

似たようなものを覚えるのは大変…と思う人もいるかもだけど
実はこいつらにはある特徴があるので、それを気を付けておけば大丈夫。

その特徴っていうのが
酸触媒:-は発生しない
塩基触媒:+は発生しない
だ。

実際、上2つの反応ではこの特徴が出ているよね?
これは反応機構を考える際にはとても役立つので押さえておこう。

あと気付いている人もいると思うけど
水和反応は可逆反応だ。

何がいいたいかというと
水和物のみを単離するのは難しい…というか不可能っていうことです。

(2)水和反応に影響を及ぼす因子

↑で可逆反応ってことを紹介したけど
水和物だけを作りたい
という場合は可逆反応を水和物が発生しやすい様に調整すればいい。
さてこれを考える場合以下の2つが大きな問題になってくる。

・立体的効果
・電子的効果

では順番に見ていこう

<立体的効果>

まずRがかさ高くなると、立体障害のためsp混成軌道のカルボニル形より
sp混成軌道の水和型になりにくくなる。

つまりRが大きいと
カルボニル型が多くなる→水和物が出来にくくなる
ということなんだ。

具体的な例として以下のように平衡定数Kを比べてみると見ると
Rのかさ高い方が平衡定数が低下している
すなわち、水和物が出来にくくなっているってことが分かるんだ。

<電子的効果>

こいつについてはカルボニルが共鳴できる
ということを思い出してほしい。

共鳴構造が安定であるということは、
カルボニルが安定ということでもあるので
結果、水和物が出来にくくなる

見方を変えると、共鳴構造が不安定であれば、
水和物が多くできるということだ。

カルボニルの共鳴構造を見てみるとC上に正電荷が来る。
このの隣を電子求引性基にできれば…そう、不安定になるよね。
つまり、
カルボニルの置換基が電子求引基なら水和物は多くできる
っていう風に考えることができるんだ。

以上を踏まえてカルボニルの反応性が高い順に並べると以下のようになる。

あくまで電子求引性が高い置換基がついている
カルボニル>ホルムアルデヒド(置換基が一番小さいカルボニル)>他のアルデヒド>ケトン
の順に反応しやすくなる、ということをしっかりと理解しておこう。

ではまた次回。

 

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