それでは続きから~。
さておそらく初登場だと思うのでまずは
チアゾリニウム塩(thiazolium salt)がどういったものかについて説明します。
一般的にチアゾールのNをアルキル化することで作れます。
SやNを持つのでいわゆる
ヘテロ芳香族化合物
というやつですな。
で、ここで紹介しているということで当然のごとく
こいつもアルデヒドにC-C結合を作りたいときに使えます。
注目すべき特徴は脱プロトン後に以下のように共鳴できるってところだね。
どういうことかというと環状チオアセタールよりもpKaが低い(pKa=約17~19)。
つまりは、強塩基を使わなくても脱プロトン化できるっていう強みがあるということです。
例として、このチアゾリウム塩を触媒として
以下のようなアルデヒドのカップリング反応(※)を起こすと
α-ヒドロキシケトンを作ることができます。
※2つの化学物質を選択的に結合させること。
□今回はアルデヒドどうしの結合を指しています。
この反応機構は全部で5段階・・・
ということで順番に見てみよう。
先ほど説明した通り
脱プロトン化後に共鳴安定化するので強塩基でなくても反応はおこります。
ちなみにチアゾリウム塩が有機溶媒に溶けやすくするために
R部分は長鎖アルキルだと考えてください。
(1)でできた脱プロトン化したチアゾリウム塩が
アルデヒドのカルボニル基へ求核攻撃を行います。
※注意点として見ての通りなんですがこの付加反応は可逆反応です。
(2)でできたアルコールが
チアゾリニウム部分が電子求引性の置換基
という扱いになるため、隣接位のHの酸性度を増大させる。
この影響で脱プロトン化が起こり、結果としてとっても安定な
マスクされたアシルアニオン(アシルアニオン等価体)ができます。
ここで(3)でできたアシルアニオンが
もう1分子のアルデヒドを求核攻撃します。
この結果としてチアゾリウム塩とα-ヒドロキシケトンが
合体したようなものができます。
まぁここはそのまんまで
(4)の生成物からチアゾリニウム置換基が脱離すると
αーヒドロキシケトンが遊離します。
さて、最後に環状チオアセタールと比べたときの
メリット、デメリットを説明しておこう。
メリット:
これは最初に方で書いちゃっているけど
チアゾリウム塩を触媒量しか使っていない
つまり材料を減らせるっていうのがメリットだ。
デメリット:
もう気付いている人もいるかもしれないけど
この方法は、以下のように2つのR基が同じ分子の合成に限られてしまう。
つまりは用途が狭いっていうところだね。
※わからなかったら見直して欲しいんだけど
□環状チオアセタールはR基が別々でも合成できるよ。
今回説明したアシルアニオン等価体を利用すれば
さらにいろいろな合成ができるようになるので頑張って理解してみてください。
ではまた次回。
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